最後の恋

一ノ瀬君のそんな顔を見るのは初めてだった。


そんな心を許してる相手に見せるみたいな彼の笑顔が私に向けられるのも……。


私の顔は今、赤くなっていないかな…


一ノ瀬君への気持ちが顔に出ていない？ちゃんと隠せてる？


「一ノ瀬くんって…以外と意地悪な人だったんだ。」


そう言って誤魔化しながら、視線を正面のPC画面に戻した。


平常心を保とうと心がけながら、本日返却予定の本にザッと目を通していたけど頭の中には全く入ってこなかった。


「やっと分かった？」

「…うん、今分かった。」


別に本気で意地悪な人だと思って言ったわけじゃなかったのに…。


次に一ノ瀬君の口から出た言葉が、自嘲気味な響きを持っていたのは気のせいではなかった。