最後の恋
「みんな、俺の外見だけに騙されてるんだよね。優しそうって言われるけど、本当の俺は全然違うから…。」


その言い方があまりに悲しく聞こえて、一ノ瀬君から意識的に背けていた目をまた彼に向けた。


「一ノ瀬くん…何か…あったの?」


無意識にそんな言葉をかけていた。


彼はハッとしたように一瞬だけ驚いていたけど、また直ぐにさっきまで見せてくれていたような笑顔に戻り明るい声でこう言った。


「ううん、何もないよ。それより、この返却された本はどうすればいいの?」


一ノ瀬君が触れられたくないなら、私にはこれ以上は彼の心の中には踏み込めない。


まだ友達にさえなれていない私たちだから………。


私も敢えて何も気にしていないフリをして、一ノ瀬君と一緒に返却された本の処理と片付けを行いその日の当番を終えた。
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