レス・パウダーレス
そして、表情をやわらかく崩して、言ったんだ。
「……かーわいい」
「……っ、」
……あ。
彼の言葉を聞いたとき。
ゆるやかなカーブを描いた瞳にわたしが映っているのを見たとき、ホロホロとはがれていくものがあった。
はがれ落ちて見えた、心の真ん中。
何も知らない、幼いわたしが、ひょこりと顔を出す。
キラキラしている。ドキドキしている。
トクトク、動いてる。
ああ、よかった。まだあった。ここに残ってた、ちゃんと。
「……なんで、泣いてんの」
なんでだろう。なんでだろうね。よくわかんないけど、今。
わたし、大丈夫だ。そう思ったんだ。
【end.】


