溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「か、かしこまりました。この度は、本当に申し訳ありませんでした。後ほど正式な謝罪をさせていただきます。瑠璃子さん、行きましょう」
呆然としたままの森田さんを連れて、深くお辞儀をしてから部屋を出て行く。
ふたりっきりになると、主任は床に座り込んでいる私を抱き上げて部屋のソファに座らせた。自分は床にしゃがみこんだまま、真正面から私の顔を覗き込む。
「沙奈、大丈夫? ドレス、とてもよく似合ってるよ。すごくかわいくて、誰にも見せたくないくらい」
「あ、ありがとう。東吾もかっこいいよ」
挙式のときとはガラリとイメージを変えて、ネイビーのタキシードを着こなした姿は、モデルのようにかっこいい。
褒め返した私にふっと微笑んだ東吾だったが、すぐに真剣な顔に戻って頰についた涙の跡を指でなでた。
「ごめん、沙奈。こうなることが想定できなかったわけではないのに、親父の顔をたてて森田ウェディングと提携したことが間違いだった。俺の判断ミスだ」
申し訳なさそうに眉を寄せた主任が、はあっと深いため息をついた。
「うちの親父と彼女の父親が、学生時代からの友人でね。小さい頃から、よく顔を合わせてた。彼女から好意を寄せられていたことも知っていたし、親同士は酒の席で結婚させるか、なんて話してたけど、俺にとって彼女はただの幼なじみでしかない。彼女にもしっかり意思表示はしていたし、沙奈にプロポーズする前にハッキリと自分の気持ちは伝えている。俺が大切にしたいのは、沙奈だけだ。それは、わかってくれる?」
彼の問いかけに、コクリとうなずく。今は彼の気持ちを信じているし、彼女との仲を疑っているわけでもない。