溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「それに、好きな人に触れてもらえるのはうれしいから」
本音半分、媚び半分。甘えるように硬い胸に頰を擦り寄せると、東吾は眉尻を下げて困ったように笑った。
「本当、沙奈には敵わない。強情な沙奈を追いつめるのも楽しかったけど、これはこれでたまらない」
額から頰、耳へ唇を滑らせた東吾が、耳朶を食みながらクスリと笑う。
「かわいいおねだりに免じて、ごまかされてあげるよ」
これは、なにもかもお見通しですね。でも、これでひとつ、結婚生活を円滑に送るための武器を手に入れた。
都合が悪くなったときは、『甘えておねだり』が有効だ。ちょっと苦手な分野ではあるが、使えるものは使わなくては。
だって、私たちはまだ始まったばかり。人生も結婚生活も、まだまだこれから。先は長いのだ。
東吾が私を幸せにしてくれるなら、私は東吾を幸せにできるように、努力しよう。
同じ方向を向いて、それを見失わないようにしていれば、きっと大丈夫。
ニコニコする私の顔を覗き込んで、東吾がにっこりと笑った。あ、なんかまずい。
そう思った瞬間に、邪魔だとばかりに掛け布団が床に落とされる。
なにも身につけていない身体が、明るい陽の下で東吾に晒される。