溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
衝撃的な事実に、唖然とする私に東吾は肩をすくめた。
「だって俺、あの時点で沙奈と結婚するって決めてたから。キスを許してくれた時点で、好意は持ってくれてると思ったし。どんどん外堀埋めなきゃと思って」
「う、うん。そっか、そうだよね……」
い、言えない。あの時点ではまったく好意なんてなくて、むしろ好きになるわけがないと思っていたなんて。
キスを受け入れたのは、背に腹をかえられなかったからだ。
うん。この事実は、秘密のまま墓場まで持っていこう。
それにしても、薄々勘づいてはいたが、やっぱり最初からだった。そうして私は、まんまと彼の策にはまってしまったわけだ。
「ま、もういいよね。こうして無事に結婚したわけだし。時効、時効。お互い、ね? それともその不審な態度、突っ込んだほうがいい?」
私の態度になにかを感じ取ったらしい東吾が、笑顔で私の目をじっと覗き込んでくる。
ま、まずい。悟られるわけにはいかない。世の中には知らなくていいことがあると思う。
ごまかしたい一心で、背中に手を回して自分からキスをすると、彼は目を細めて脇腹をなでる。
「……いいの?」
「うん。だって私、東吾の奥さんだもん。なんかね、女は受け入れて、許す生き物なんだって。だから、東吾のしたいようにして」
だから、ごまかされてくれ。若干の後ろめたさはいなめないが、心のメモ帳に書いておいた半澤語録を口にして微笑む。