溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

「沙奈、起きてる?」

その声にハッとする。お風呂に入っていた主任が出てきたみたいだ。

「うん、起きてるよ」

「暗いから、寝てるのかと思った。電気も点けないで、どうしたの?」

風呂上がりの主任が、ベッドに膝をついて私の顔を覗き込んでくる。

「ちょっと考え事してた」

ふわりと爽やかで、甘い香りが私を包み込む。温かい唇が頰に触れて、チュッと首筋にキスをされる。

これもキスの一種だと、首や耳にもキスをされるようになった。これがまた、ものすごく心臓に悪い。

「ん、やっ」

そして、とても恥ずかしい。主任にそんなところにキスされると、なぜだか鼻にかかった甘えた声が出てしまい身体が熱くなる。

「かわいい、沙奈」

どこか甘い声でそう囁いて、唇に熱を帯びた唇が重なる。寝る前のこの時間は、報酬のキスの時間。

最初は、感触を楽しむように軽く唇を合わせるだけ。角度を変えて唇を合わせながら、チュウっと唇を吸われる。

「沙奈……」

名前を呼ばれたら、私は彼の首に手を回す。それが合図ように、キスが深くなる。

この一ヶ月で、すっかり彼のキスの仕方を覚えてしまった。唇の形も、その熱さも、器用に口の中で動く舌の柔らかさも……。

主任のキスは、私にドキドキと心地よさをくれる。甘くて、とても甘くて……溺れそうになってしまう。

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