溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
仕事が終わったら、自分の家ではなく主任の家に帰る。預かっている鍵で部屋の中に入って、夕飯の準備をする。
それから先にお風呂を済ませて、主任からメールがきたら夕飯を温めて一緒に夕飯を食べる。
洗い物をして、お風呂に入っている主任を待つ。
すっかり定着してしまった一日の流れを終えて、寝室のベッドに寝転がる。
あれから高橋には、「そういうことなら早く言えよ」と、キレられた。
仕事の早いできる男、桐島主任は外回りに出る前に高橋に口止めをしていったらしい。
「浅田、めちゃくちゃ愛されてんな。桐島主任の笑顔初めて見たわ。すげぇ怖かった」と、高橋はなぜか青くなっていて、詳細を聞こうとしても絶対に教えてくれなかった。
それにしても、どんどんまずい状況になっている気がする。
今の同棲状態もまずいと思うし、会社で変な噂が広がるのもまずい。
あの様子だと、高橋はペラペラと喋ったりはしないだろうけど、あとでもう一回念押ししておこう。だから、それはまあいい。
それよりもなによりも、一番まずいのは、私自身の気持ちだ。契約と呼ぶには近すぎる今の関係が、とてもあたたかくて心地よい。
だけど、主任が隣にいることに慣れてはいけない。あたり前になってはいけない。
この契約が終わったとき、私は最愛の家族を失う。そして、ひとりになるのだ。
ひとりで……。