溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

「本当だ。すごく綺麗……」

「……沙奈」

幻想的なその光景に見とれていると、名前を呼ばれる。月から主任に視線を移した私は、信じられない気持ちで目を見開いた。

嘘……でしょ。なんで、そんなものを持っているの?

「僕と結婚してほしい」

驚きのあまり目を見開いたまま固まる私を、彼は真剣な顔で見つめている。

彼が私に、四角い箱を差し出す。そこにあるのは、月の光を受けてキラキラと輝くダイヤモンドのついた指輪。

「ど……して……」

じいちゃんの前だということをすっかり忘れて、呆然と主任の顔を見つめながら問いかける。

それは、どう見ても“婚約指輪”と呼ばれる代物。そんなもの、偽りの関係である私たちに必要はないはずだ。

「今の関係を終わりにして、本物にしたいんだ。沙奈、僕と夫婦になろう。これから先、なにがあっても……僕が沙奈を支えるから」

ドクン、ドクンと、心臓の音が大きく聞こえる。寒くもないのに、背中を冷汗が伝っていく。

目の前で真っ直ぐに私を見つめている彼がなにを考えているのか、まったくわからない。ひとつたしかなのは、彼の言葉に嘘はないこと。

これは、偽りなんかじゃない。主任からの本気のプロポーズだ。

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