溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


「こっちで少しお酒を飲みませんか。ほら、月がとても綺麗ですよ」

「お、月見酒か。いやぁ、贅沢だなぁ」

お酒が大好きなじいちゃんは、うれしそうに立ち上がり嬉々としてソファに向かっていく。

少し遅れて立ち上がった私は、窓辺に立つ主任の姿を見てビクリと身体を震わせた。

「どうしたの、沙奈。おいで」

なぜだろう、ニコリと微笑んだ彼が恐ろしい。今、あの場所に近づいてはいけない気がする。

固まる私を、不思議そうな顔をしたじいちゃんが振り返った。

「どうした、沙奈。こっちさこう」

じいちゃんに手招きされて、私は近付きたくないと思いながらも仕方なくそちらに向かう。

主任のそばを避けて、じいちゃんの隣に座ろうとした私の腕を、彼が掴んだ。

「大事な話があるんだ。沙奈、聞いてくれる?」

その言葉が合図のように、いそいそとソファから立ち上がったじいちゃんが、部屋の電気を暗くする。

な、なんで? なぜ、電気を消すんだじいちゃん。

戻ってきてソファに座るじいちゃんを訝しげな目で見つめていると、突然、主任に手を握られてハッとして彼を振り返る。

「え、あ、あの……」

「見て、沙奈。今日は満月だよ。月が海に道を作ってる。ムーンロードっていうんだって」

その言葉に窓の外に目をやれば、見事な満月に照らされて、海面に道ができている。

キラキラと黄金に輝く月の道は、なんだかとても神秘的だ。

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