溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
久遠寺ありすは、短大に通う女子学生だ。

少しだけ普通の人と違うのは、
父親が事業をし、少しばかり成功したおかげで、
家庭は経済的に豊かで、
そのおかげで、ありすは、
世間からは、
「いいところのお嬢様」だと思われている、
ということだ。

お嬢様の常であるように、
当然のように、幼稚園から
地域では有名なお嬢様学校に通わされ、

あまり勉強が得意でもなかったため、
そのまま付属の小中高と進学し、
何も考えずに、短大へと進学した。

女子校出身ということで、
常に周りにいたのは女性ばかり。
初恋すらしたことがない。

もちろん、恋に深い憧れはあるものの……。
これから本当の大人の女性になれば、
きっとそんな素敵な恋をする機会も得られると、

実際の19歳という年齢の割には、
相当夢見がちな事を考えていたのだが……。


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「え? 結婚?」
ありすに対して、普段は相当に甘い父親が
いきなり言い出した言葉に対して、
ありすは絶句した。

「……まだ私、成人もしてないんですけど?」
思わず生意気な娘の口調で言い返すと、
壮年になってもまだ、まわりからは素敵、
と言われる様な魅力的な笑みを父親は浮かべる。

「……もう二十歳になるのだろう?
お前の母が、私に嫁いだのも
二十歳の頃だったぞ?

……弥生は本当に綺麗だった……」

などといきなり遠い目をされても困る。
何故なら、ありすは母親の記憶があまりないからだ。
ありすの母、弥生は、ありすがまだ小さな頃に
亡くなっており、ありす自身はあまり母の記憶はあまりない。

そんな母と同じように、二十歳で嫁に行きなさい、
と父親は突如言い出したのだ。

「だからってなんで、私まで二十歳で
結婚する必要なんて……」
言い返そうとすると、父はにっこりと笑う。

「安心しろ。父がお前のために、
素晴らしい夫候補を選んでやった。

お前が気に入った奴と結婚したらいい。
早速、明日の夜にパーティを開くから、
お前は夕食後、衣装合わせをするように。

ああ、相手さえ決まればお前が二十歳になる日に
結婚式を挙げてもらおう。幸せな花嫁になってくれ」

どうやら思いついたらそのまま突っ走る、
感性の塊で生きているような父親には、
ありすの気持ちなど、まったく伝わってないようで。

動揺するありすをその場に置き去りにして
父親はさっさと仕事に向かってしまったのだった。


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