もう一度、あなたに恋していいですか
「その日の会社終わり、俺らはホテルで一線を越えました。それから週1回、俺らはホテルに行くようになりました。でも週1回じゃ足りなくて、月日が流れるにつれ、会う回数も増えていきました。俺は会うたび、彼女を好きになりました」

愛莉さんの話をする三枝さんは、本当に切ない表情を見せる。
時には愛しく、時には苦しく、愛に溢れた表情。
彼女を本当に愛しているんだ。

「そんな関係を半年、続けました。俺はその頃には”彼女を自分だけのものにしたい”と思うようになりました。そしてある日、彼女に告げました。”俺と一緒になってほしい”って。そしたら彼女、なんて言ったと思いますか」

「”私も”とかですか」

私がそう言うと彼は笑った。

「真逆ですよ。”それはできない”って」

「何で…ですか」

昔の三枝さんと今の私は同じだった。
結婚している人を想って、月日が経つにつれ独り占めしたい気持ちが強くなる。
”きっと相手も同じ気持ちだ”
そう考えていて…

「”旦那とは別れられない”って、そのときはっきり言われました。それから彼女とは話しづらくなって、結局別れました」

「…旦那さんのこと、まだ好きだったってことですか」

「そうでしょうね。彼女も俺と同じ気持ちだと思ってました。俺が”愛してる”って言ったら、彼女はいつも笑って”私もよ”って言ってくれていました。でも別れてから気づいたんです。彼女から”愛してる”って、言われたことなんてなかった…って。いつも言うのは俺からだったんです」

「…」

泣きそうな声で、彼はそう言った。
私もつられて泣きそうになり、涙が溢れないように上を向く。
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