もう一度、あなたに恋していいですか
「それは八木くんが、お姉さんのことを好きだからですか」

「…はい。そして寧々ちゃんも昴が好きで、本当は両思いなんです。でもお互い気づいていない。寧々ちゃんなら昴をとられてもいい…そう思っているのに、二人をくっ付ける勇気もない。私ってズルいんです」

なんで今までほとんど話したことがない西條先生にこんな話をしているのだろう。

昴を好きなことを、友達にも誰にも打ち明けられなかった。
本当はずっと誰かに聞いてほしかったのかもしれない。

「好きな人をとられたくないって思うのは、普通の感情じゃないでしょうか」

「え…」

「僕なら好きな人が他の人を好きだったらそりゃあ妬きますし、悔しいですし、邪魔してやりたくなります。引き離してやりたいって思います。だからあなたは優しすぎるくらいですよ」

「優しいって…変な人」

「よく言われます。もしまた辛くなったら、保健室に来てください。いつでも話聞きますよ」

「体調が悪いわけでもないのに?」

「あなたは恋の病にかかっているんだからいいんですよ」

「何ですかそれ。本当に変な人」

”恋の病”という単語に私は思わず笑ってしまう。
先生が言う言葉じゃないでしょ。

「あなたは笑っていたほうが可愛いですよ」

そう言って先生は笑う。
先生ってそんなことをいう人だったんだ。

「ありがとうございます。先生面白いから、お言葉に甘えてまた来ます」

「はい、お待ちしてます」

そう言ってその日はすぐに裏庭をあとにし、寧々ちゃんの教室へ向かった。
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