もう一度、あなたに恋していいですか
「結局ぎりぎりじゃない!美々、昴はやくはやく!」

出欠点検5分前に下駄箱に着いた私たちは、急いで靴を脱ぎ廊下を走る。
私は出遅れて昴の後ろを追いかける。
私たちと同じような状況の生徒も廊下を走るのが見受けられた。

「あ…っ」

私は足を滑らせバランスを崩し、小さな声をあげる。
あ、無理だ。
たて直せない。
転けるのを覚悟すると同時に、誰かが私の身体を引っ張った。

「あ…西條先生」

「おはようございます柏木美々さん。足はひねっていませんか」

「は、はい大丈夫です」

ち、近い。
西條先生の顔が目の前にある。

先生って睫毛長いんだなあ。
普段は眼鏡をしてわからなかったけれど、目もぱっちりしていて綺麗な二重だ。
確かに眼鏡をはずしたら格好いいのかも。

「おい、美々大丈夫か?」

向こうから寧々ちゃんと昴が走ってくる。
昴の姿が見えて反射的に先生の腕から離れる。

「だ、大丈夫!先生が助けてくれたから」

私は赤くなった顔を隠すように目を伏せる。

先生、すごく力強かった。
私なんか軽々と引っ張って抱き締めて。
思わずどきっとしてしまった。

「…そうか」

昴はぽつりとそう言った。

「おはようございます柏木寧々さん、八木昴くん。大丈夫ですかもうすぐ予鈴鳴りますけど」

先生がそう言ったタイミングで予鈴は校舎中に鳴り響く。

「やっべ!寧々、美々行くぞ!」

二人が走り始めたあと私は先生に一礼をして背を向け、教室へと走り始めた。
私の心臓はまだ鳴りやまないままだった。
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