もう一度、あなたに恋していいですか
「柏木寧々さんとあなたとでは全く違いますよ。だから一瞬で見分けられます」

ーーーどくん。

昴と同じこと言うんだ。

「見分け方は?一体何で見分けているんですか?」

「何でって言われても難しいですね。見た目は似ていても雰囲気が全く違います。歩き方とかもそうですね。二人が並んで後ろを向いて歩いていても、私は見分けられる自信がありますよ」

「そうなんだ…」

先生は出来上がった珈琲をピンクとブルーのマグカップにに分け、ピンクのマグカップにミルクと砂糖を入れる。
そしてピンクのマグカップを私に差し出す。

「熱いので気を付けてくださいね」

「ありがとうございます」

ふわっと鼻をかすめる珈琲の香り。
ミルクを入れたからか少し甘い香りがする。

「この珈琲美味しいんですよ。ドリップ珈琲ですけど、私のお気に入りです」

私は息を吹きかけて少し冷ましてから、カップに口をつける。

「あ…本当だ。美味しい」

ゆっくりと時間をかけて口に流し込んでいき、気づけばカップの珈琲はなくなっていた。
普段そんなに珈琲を飲むわけではないけれど、この珈琲は今まで飲んだなかで一番美味しく感じた。

「美味しかったでしょう?また今度保健室に来たときに御馳走しますよ」

「はい」

私は空になったマグカップを両手でぎゅっと握りしめる。
先生の眼鏡の奥の瞳が優しく笑っているように見えて、一瞬胸がとくんと跳ねた。
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