もう一度、あなたに恋していいですか


「寧々ちゃん。今日は先に学校行くね」

次の日の朝、洗面台で鏡を見ながら髪をととのえる寧々ちゃんにそう告げる。

「え、何で?」

寧々ちゃんは不思議そうな顔をして私を見つめる。

「…今日日直なの」

私は咄嗟に嘘をつく。

「ああ、そうなの。わかったわ。今日は昴とふたりで登校するわね」

”昴”という名前を聞いて、思わずどきりとする。

「…うん、ごめんね」



いつもの通学路を一人きりで歩く。
毎日昴が話続けていて会話が途切れない朝も、今日は静かで車の音や鳥のさえずりが聞こえる。

小学生のころから誰かが休むとき以外はずっと、3人で一緒に登校していた。
もうこれから3人で登校することなんてない。

私は涙をこらえて誰もいない通学路をゆっくりと歩いていった。
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