もう一度、あなたに恋していいですか

「寧々、数学の教科書貸して」

昼休み。
昴は私の教室へやって来て、第一声がそれだった。

「また忘れたの?しょうがないわね」

私は机の中から数学の教科書を取り出し、昴に手渡す。

「さんきゅ。助かる」

本当、しょうがないわね昴は。
私はため息をつきつつも、そんな昴の世話をやくことは嫌いじゃない。

「帰りに返す」

「わかったわ」

昴が私の教科書を持って自分の教室へ帰ろうとしたときだった。

「柏木と八木ってさ、できてるだろ」

後ろの席の男子が、私たちを見てそう声をかけてくる。

「違うわよ。そんなんじゃないわ」

彼は教室中に響くような通る声で話すので、まわりのクラスメイトが私たちのほうに注目する。

「いくら幼なじみだからってお前らべったりしすぎだろ。なあ?」

彼は強めの口調でまわりのクラスメイト達に同意を促す。
クラスメイト達はお互い顔を見合わしている。

「…確かに、ちょっとべったりしすぎだよな」

窓側にいる男子がそう呟く。
それをきっかけにまわりの子達も控えめだが、次々と彼に同意していく。

「昴とはそんなんじゃないわ!」

「どうだかな~」

いくら言っても彼は聞く耳を持たず冷やかしてくる。
本当に違うのに、何といえばおさまるのかわからない。
どうしたらいいの?

もう諦めようとしたその時だった。
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