もう一度、あなたに恋していいですか
「羨ましいだろ」

沈黙を守っていた昴がついに口を開く。

「何だよ八木。認めるのかよ」

「いいや。寧々は事実を言ってる。俺らはただの幼なじみだよ」

「べったりのくせに?信じらんねえな」

さっきまでの私の発言と一緒じゃない。
何を言いたいの昴は。

「そら信じらんねえだろうな。好きな子が俺と付き合ってるかもしれないって思ったら気が気じゃないよなあ」

昴は彼の隣の机に腰かけてにやにや笑っている。

「お、お前何言って…」

「好きな子はいじめちゃうってやつ?あんまり意地の悪いこと言ってると嫌われるぞ。惚れてる寧々に」

え、何言ってるの昴は?

「私、席替えのときに本当はその席だったのに、変わってって言われたわ。やっぱり柏木さんを好きだったのね」

教室の後ろにいるクラスメイトの女の子が、そう証言をする。
それをきっかけに次々と声が上がり、一気に風は彼のほうに吹き始める。

「お前柏木のこと好きだったのかよ!」

「男子って子供ね、本当」

クラスメイト達がひそひそ話を始めると、彼は顔を赤く染めうつむいて動かなくなる。

「八木!お前覚えてろよ!」

彼はそんな捨てゼリフを吐いて教室を飛び出していった。


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