日常に、ほんの少しの恋を添えて
「いや、うん。専務と秘書と言っても男と女だからそれは仕方ないことよね。ロマンス小説とかでもよくある展開だしね……って違うわ。長谷川さん、前専務と自分は相性が悪いって言ってたじゃない? なのにそれがどうひっくり返って「好き」になったの?」
「それは……」

 私はこれまで起きたことを簡単にまとめ、新見さんにわかるように説明した。
 酔っ払った私を介抱してくれたこと、ショッピングモールで偶然遭遇し、二人で買い物を楽しんだこと。それらの出来事を経て、気が付いたら専務のことを好きになっていたこと。
 話を聞き終えた新見さんは、「ほおおお……」と軽く頬を紅潮させ、座っている木製の椅子に腕を組んでもたれかかる。

「それは……長谷川さんじゃなくっても惚れるわね。むしろ酔っ払って介抱してもらった時点で惚れてない長谷川さんが凄い」
「いや……あの出来事は自分の不甲斐なさが際立ってしまったので……冷静になってから、専務の優しさがじわじわ実感できたんですけど……この前のショッピングモールでのデート……みたいなやつはほんと、もう勘弁してくださいって感じでした。専務イケメンすぎて」

 新見さんも思うところがあるのか、うんうん頷いている。

「そうなのよね~専務ってほんとイケメンなのよね。見た目だけじゃなくて、中身も。私も旦那がいなかったらヤバかったな。惚れてたかもしれない」
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