日常に、ほんの少しの恋を添えて
私の脳裏にあの夜のことが浮かぶ。
新見さんが言うように、専務はあの夜も、文句のひとつも私に言わなかった。
専務ってそういう人なんだ、と彼女の言葉に妙に納得してしまう自分がいる。
「うちの会社には玉の輿に乗りたいからって専務を狙ってる女性社員、結構いるみたいだけど……私は長谷川さんみたいに、上司に恋してしまって困惑しちゃうような人の方が湊専務には合うと思うの」
「だって、やっぱり直属の上司に恋するっていうのはマズいんじゃないかと……」
「そんなことない! だから頑張って!」
思いがけず応援されて、恐縮する。
だけどなんだか嬉しそうにニコニコ笑う新見さんを前にして、これ以上ネガティブなことを言うのも気が引けてしまう。私は小さく頷き、頑張りますと彼女に伝えた。
新見さんはこの週末で勤務を終え、来週には旦那様が待つ北米へと旅立つのだそうだ。
「でもたまに帰ってくるから、その時に進捗状況聞かせてね!」
と釘を刺されてしまった。それはそれで怖いものがあるけど、せっかくできたご縁がまだ続きそうなことがちょっと嬉しかった。
そして数日後、新見さんは惜しまれつつ退社した。
新見さんがいなくなった秘書室は、想像はしていたけどやっぱり今までと何か空気が違う気がした。
新見さんが言うように、専務はあの夜も、文句のひとつも私に言わなかった。
専務ってそういう人なんだ、と彼女の言葉に妙に納得してしまう自分がいる。
「うちの会社には玉の輿に乗りたいからって専務を狙ってる女性社員、結構いるみたいだけど……私は長谷川さんみたいに、上司に恋してしまって困惑しちゃうような人の方が湊専務には合うと思うの」
「だって、やっぱり直属の上司に恋するっていうのはマズいんじゃないかと……」
「そんなことない! だから頑張って!」
思いがけず応援されて、恐縮する。
だけどなんだか嬉しそうにニコニコ笑う新見さんを前にして、これ以上ネガティブなことを言うのも気が引けてしまう。私は小さく頷き、頑張りますと彼女に伝えた。
新見さんはこの週末で勤務を終え、来週には旦那様が待つ北米へと旅立つのだそうだ。
「でもたまに帰ってくるから、その時に進捗状況聞かせてね!」
と釘を刺されてしまった。それはそれで怖いものがあるけど、せっかくできたご縁がまだ続きそうなことがちょっと嬉しかった。
そして数日後、新見さんは惜しまれつつ退社した。
新見さんがいなくなった秘書室は、想像はしていたけどやっぱり今までと何か空気が違う気がした。