日常に、ほんの少しの恋を添えて
「違う違う、そういうんじゃなくて……なんか、しっかりしてるかと思えばお菓子のことで怒るし、飲み会ではあんなだったし、本当の長谷川ってどんな子だろうって興味がわいたんだ」
「お菓子はまだしも、飲み会のは完全に失態ですので、どうか忘れてください……」

 またあの夜のことを思い出して、私は羞恥でいたたまれず両手で顔を覆った。

「でも、俺はそんな長谷川を可愛いと思った」

 ――え。今、専務なんて言っ……

「専務、あの、それって……」

 顔を覆っていた手を外し、専務の顔を見つめた、その瞬間。

 ピンポーン

 インターホンらしき音が部屋に響く。

「なんだ、誰だ?」

 ベッドから起き上がった専務が出て行こうとするので、私は慌てて「ここは私が!」と専務より先にモニターがあるリビングに戻った。
 そしてモニターを覗き込んだ私の思考は、画面に映った人物を見た瞬間に停止する。

「は!?」

 え、なんでこの人がここにいるんだろう、と思った私は一人で首を傾げた。
 
 と、取りあえず……これは私では判断できない。専務に聞こう。

 再び寝室に戻り、お茶を飲んでいる専務にあの、と声をかける。
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