日常に、ほんの少しの恋を添えて
 
 ……へっ。私? 私に会いたかったっていうの? なんで?

 急に私に話が振られ、私が驚きの眼差しを彼女に向けると、美鈴さんと視線がぶつかる。
 予定外の矛先変更に、私は困惑して紅茶を淹れる手が止まる。

「長谷川に? 何の話だよ」
「うふふ。ちょっとね」

 そう言いながら、美鈴さんがキッチンにいる私へと視線を投げる。

 ――しまった。紅茶淹れ終わった……持っていかねばならない。このタイミングで……

 仕方なく私は紅茶をトレイに乗せ、リビング中央のソファに座る美鈴さんの元へ移動する。

「どうぞ」
「ありがと。ねえ、秘書さん。あなた随分若く見えるけど、おいくつなの?」
「23歳です」

 年齢を言った瞬間、美鈴さんの眼がくわっと見開かれた。

「はああああ!? 23!? そんなに若いの!? ちょっと、湊っ何こんな若い子に手出してんの!?」
「手なんか出してないよ」
「え、そうなの? ……ふうん……」

 驚いていた美鈴さんだが、すぐに表情が戻った。

 ここで心配そうに私と美鈴さんを交互に見ていた専務が、またゴフゴフと咳込み出した。
 
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