日常に、ほんの少しの恋を添えて
「はい」
「好きだよ」
「はい?」

 脊髄反射で聞き返した。だけど、返事は返ってこなかった。

「……???」

 恐る恐る専務に近づいてみると、スー……という寝息が聞こえてきた。

 寝てる。
 期待していたわけではないが、なんとなくがっかりしてしまう。
 じゃあ、さっきのは寝言だったのかな。

 好きだよって言われたような気がしたけど、気のせいだったのかな。

 私は専務の顔を見ながらため息をつき、寝室を出た。


 結局そのあと専務からの呼び出しはなく、帰ろうかどうしようか悩んだ私は、私は午前0時までソファーでテレビを見ながらぼんやりしていた。がしかしいつの間にか寝てしまい、目が覚めた時には遮光カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。

「……朝か……」

 ソファーでぱたりと横になり寝てしまったので、ちょっと体が痛い。でも体には毛布が掛けてあった。
 専務が掛けてくれたのかな……?

 私は体を起こし、んん……と背伸びをした。

 そうだ、専務の熱は? 

 洗面所で軽く顔を洗い、歯を磨き身なりを整えてから、私は寝室のドアをノックした。

「起きてるよ」

 どうやら起き抜けではない様子の専務の声にホッとする。それに声も昨日より張りがある。

「失礼します」

 ドアを開けると、すでに起きていた専務はベッドの上でノートPCに向かっていた。


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