日常に、ほんの少しの恋を添えて
 ――やっぱり、今は言うべきじゃないのかもしれない。

 気持ちは沈むが、好きな人の幸せを願うなら仕方のないことだ。

 なんとなくデスクに置かれた身だしなみチェック用の鏡に映る、自分の顔を見る。自分でもびっくりするくらい落ち込んでる暗い顔にギョッとしてしまう。

 こんなんじゃ専務に心配かけちゃう。それでなくても明日は最終日なんだから、しっかりしなくては。

 気合を入れて仕事に勤しむけど結局どこか気持ちが晴れなくて、気を紛らわすためにその日は夜中まで趣味のお菓子作りに没頭した。




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