日常に、ほんの少しの恋を添えて
「そ、そんなことないです! 私嬉しかったです、そんな風に言ってもらえて……」
「いや、感情に任せて好きなこと言って悪かった。長谷川は冷静に俺のこと考えてくれたんだよな。それなのに俺は自分のことばかり考えてて……いい歳して恥ずかしい」
「そんなことないです!」
私は専務の袖をつかみ、強い口調と眼差しで訴える。すると私の剣幕に専務がフッと頬を緩ませた。
「わかったよ。お前の言う通りにしてみよう。俺はお前が好きだし、付き合いたいと思ってる。だけどしばらく日本を離れなければいけない以上、お前を俺に縛り付けておくことはできない。だから……一旦、この話は無かったことにしよう。続きは、俺が日本に戻ってきてからだ。……これで、いいか?」
専務の言葉に、私は何度も何度も頷く。そんな私を見て、専務は困ったように笑った。
「ったく……俺の秘書は一筋縄じゃいかないな」
「せ、専務が選んだんじゃないですか……」
「だな。じゃあ、そろそろ行くわ」
くすくす笑いながら立ちあがると、専務は私の頭にポン、と手を乗せる。
「好きな奴ができたら、俺に構わずそっちいっていいからな」
「えっ……」
「なんて。言ってみただけだ」
少し寂しそうに笑うと、専務が玄関に向かって歩き出す。私は近くに置いてあった松葉づえを手に、よたよたと後をついていく。
「怪我してるんだから見送らなくていいのに」
靴をはき終えた専務が私を真っ直ぐに見つめて、ニッコリ笑う。
この綺麗な顔ともお別れなのか……と思ったら、鼻の奥の方がツン、としてきた。
――やばい、泣きそうだ
「いや、感情に任せて好きなこと言って悪かった。長谷川は冷静に俺のこと考えてくれたんだよな。それなのに俺は自分のことばかり考えてて……いい歳して恥ずかしい」
「そんなことないです!」
私は専務の袖をつかみ、強い口調と眼差しで訴える。すると私の剣幕に専務がフッと頬を緩ませた。
「わかったよ。お前の言う通りにしてみよう。俺はお前が好きだし、付き合いたいと思ってる。だけどしばらく日本を離れなければいけない以上、お前を俺に縛り付けておくことはできない。だから……一旦、この話は無かったことにしよう。続きは、俺が日本に戻ってきてからだ。……これで、いいか?」
専務の言葉に、私は何度も何度も頷く。そんな私を見て、専務は困ったように笑った。
「ったく……俺の秘書は一筋縄じゃいかないな」
「せ、専務が選んだんじゃないですか……」
「だな。じゃあ、そろそろ行くわ」
くすくす笑いながら立ちあがると、専務は私の頭にポン、と手を乗せる。
「好きな奴ができたら、俺に構わずそっちいっていいからな」
「えっ……」
「なんて。言ってみただけだ」
少し寂しそうに笑うと、専務が玄関に向かって歩き出す。私は近くに置いてあった松葉づえを手に、よたよたと後をついていく。
「怪我してるんだから見送らなくていいのに」
靴をはき終えた専務が私を真っ直ぐに見つめて、ニッコリ笑う。
この綺麗な顔ともお別れなのか……と思ったら、鼻の奥の方がツン、としてきた。
――やばい、泣きそうだ