日常に、ほんの少しの恋を添えて
 それを聞いて昔を思い出し、ちょっとだけ懐かしい気持ちになる。

 私が大好きな湊専務だ……

 私は握られた手を私も強く握り返し、彼を見上げる。

「ガトーショコラ、もっとおいしく作れるようになったんですよ。食べてくれますか?」
「もちろん。あれから海外でも少しずつお菓子を食べるようになったんだ。でもやっぱり志緒が作ったあのガトーショコラの味が忘れられなかった」

 私を見て、彼が微笑む。

「それは……相当美味しく作らないとがっかりされそうで怖いです」


 私たちは手を繋ぎお互いに笑い合う。

 秘書課に配属になって、この課の女性は早々に見初められて結婚する……なんて話を他人事だと思って聞いていたのに。新見さんや花島さんに話したら喜んでくれるかな。いや、びっくりするかな……

 今晩は専務の家に向かうけど、明日は私の部屋に来てもらおう。
 そして三年ぶりに私が作るガトーショコラを食べてもらって、甘いものが嫌いだと言ったことを撤回してもらわなければ。

「ん? 何?」
「いいえ別に……」

 ふと振り返り、私を見て首を傾げる彼の隣で、こっそりそんなことを企んだ。
 そして再び歩き出した彼の腕に自分の腕を絡め、驚く彼に精一杯の笑顔を返したのだった。


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