日常に、ほんの少しの恋を添えて
 途端に新見さんの涙腺が崩壊した。あとからあとから流れる涙を、花島さんに差し出されたハンカチで拭う彼女を見ていたら、ちょっと胸が熱くなってきた。

「くそう、私本当はこの会社辞めたくなんかなかったのにい……!! あいつがついて来いって……」
「まあまあ、落ち着いて、ね」

 新見さんと花島さんのやり取りをみんな笑顔で見守り、新見さんが落ち着いて席に着いたところで乾杯した。
 そこから、約1時間が経過。
 涙腺崩壊した後、酒に走った新見さんは、現在絡み酒の真っ只中だ。横につきっきりの花島さんが「はいはい、そうですね」とまるで子供をあやすかのように新見さんに寄り添っている。私はそんな光景を見ながら、のんびりこの場を楽しんでいた。

 ――だって、料理がおいしいんですもの……

 サラダにパスタ、一品料理。オーダーすればデザートもありで。それにワインも美味しくて。近くに座る先輩の女性社員とちょこちょこ話をしつつ、一通りの料理をいただいた。
 普段自宅では食べないバーニャカウダとか(作り方は知ってるが作るのがめんどくさい)お洒落な料理が沢山で、大満足! お腹空かせて来た甲斐があった。
 この店、何気に湊専務のチョイスらしいんだけど、センスいいなあ。普段からこういった店、よく行くのかな?

 湊専務も乾杯の後、席を移動しほかの役員と話をしたりしていたが、ある程度話を終えたのか、再び私の隣に戻って来た。

「はー、腹減った」
「専務、何か食べるもの取り分けましょうか」

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