日常に、ほんの少しの恋を添えて
「依存……そうなんですかね。ただ、買い物とか行きたいって思うと、人を誘ったりする前に体が動いちゃうんですよ。それに一人でぴゅーっと行って帰ってくれば時間もかからないし」
「時間って、なんでそんなに忙しくしてるんだ? 趣味とかに時間掛けるのか」
「……専務が嫌いな、お菓子作りに時間を充ててるんです」

 ちょっと言いづらくて専務の顔をちょっとだけ見て、視線を逸らしつつ白状したら、私の横でフッ、と専務が鼻で笑った音が聞こえた。

「そうだったな。体中から甘い匂いさせてな」
「!? 匂い……?」

 また言われた。
 思わずまた自分の手とか、腕の辺りをクンクン嗅いでみるけど、全くもって甘い匂いなんぞしない。それとも私の鼻、バカになってしまったのかしら。

「匂い、しませんけど……私どんな匂いがするんですか?」

 あまりにバター臭い、とかだと会社で周りの迷惑にならないだろうか。
 そう思った私は、恥ずかしいことを聞いているのは承知のうえで敢えて専務に尋ねた。

「改めて聞かれるとなんて言ったらいいのか……とにかく甘い香りがするんだよな」
「その甘さの原因が知りたいんですけど……」
「そうだな……」

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