日常に、ほんの少しの恋を添えて

　悪い悪い、と言ってはいても専務の表情は笑顔で。

　――ああ、びっくりした……

　思いがけず接近したことで、まだ心臓がどきどきしてる。　
　
　再び動き出した車中で、私は少し火照った顔を見られないよう、ずっと車の外を眺めていた。

　――早く、早くアパートに着きますように……

　その後ポツリポツリと何気ない会話を交わしていたら、私のアパート付近に到着。
停めてもらった車から降り、買い物袋を後部座席から取り出していたら、なぜか専務まで車から降りてきた。

「？　どうされました？」

　私の背後に立った専務に、私はおずおずと声をかける。

「今日はありがとな。一人でさっさと済ますはずだった買い物が、長谷川のお陰で結構楽しかった」
「えっ……ほんとですか。そう言っていただけると私も嬉しいです……！」
「で、だな。これやるよ」

　グッと私におしつけられた包みには見覚えがあった。私が見ていたストールのブランドのものだ。

「えっ、これ……」
「家に帰ってから開けてみな。じゃあ」