恋愛預金満期日 
 仕事が終わると僕達は、予約した居酒屋へと向かった。

 席に着くと、何処に誰が座るかと討論になった。

 結局、僕の横に神谷、美也の横に彼女、僕の向かいに彼女が座るという設定になった。

 五分程遅れて彼女が入って来た。

 彼女は、ピタリとしたジーンズに、グレーのニット、黒いコートを羽織り白いマフラーを巻いていた。

「遅くなってすみません……」
 彼女は僕の前に座り、コートを脱ぐとマフラーを丁寧に畳んだ。

 きっと僕に気を使って、マフラーをしてくれているのだろう? それでも僕は嬉しかった。

「何注文します?」
 美也が彼女にメニューを見せた。

「えっと、トマトサラダとチーズ揚げもいいな……」

 彼女がメニューを見ながら真剣に選んでいる。


 注文した皿が次々と運ばれて来た。

 僕達は生ビールで乾杯をした。

「雨宮さん、お土産ありがとうございます。グアムどうでした?」
 神谷が話題を切り出した。

「ありがとうございます」
 僕も慌ててお礼を言った。

「あんな物で恥ずかしいです。本当はTシャツにしようと思ったんですけど、会社の封筒に入らないと思って…… 小さい物しか買えなかったんです」
 彼女は首を竦めた。

「通帳の間に、厚い封筒が入っていたから、現金かと思って焦っちゃった」

 美也の言葉に、彼女は「ごめん」と両手を合わせ笑い出した。

「海先輩も、ハンカチ一枚しか持ってなかったから、良かったですね」
 神谷が冗談を言った。

「おい! そんな訳ないだろう!」
 僕は神谷を睨んだ。   

「それなら、二枚になって良かったですね」
 彼女はそう言った後、又笑い出した。

「そうそう、海原さん、英語でお仕事されるんですね?」
 
 彼女の言葉に僕は驚いた。

「それ程じゃ…… アメリカに留学していたもので……」

「え―。凄い。私も今、英会話教室探しているんですけど。どこかご存知ないですか?」

「それなら、先輩が教えますよ。マンツーマンで上達出来ますから!」
 神野が強引に進めた。

「本当ですか? 是非お願いします」
 彼女は意外にも乗ってきた。

「僕で良ければ……」

 僕は鼓動の高鳴りを隠すのに必死だった。


 お蔭で、英会話の為に彼女と連絡先を交換する事が出来た。
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