意地悪な両思い

 長引くと思われた打ち合わせも、
2時間かからない内に終わり、私たちは会社へと戻る。


先方さんの感じも上々。
長嶋さんって、心を掴むのが本当にうまいんだ。

眉間にしわを寄せた上役さんが出てこられたときは、びくっとしちゃったけど、最後はしわくちゃになるぐらい笑ってた程で、

おかげでお昼まで、まだ1時間近くもある。



「暑かったー。」
 戻ったぞとデスクへ腰かけると、早かったじゃないですかと田中さんがすぐに寄っていってた。


「アイスコーヒー持ってきますね。」
 それを横目に給湯室へ。

 私だって決して暑くないわけじゃないけど、
長嶋さんはたまらずYシャツをバタバタさせてるんだから相当汗をかいてるんだろう。


給湯室へ向かうついでに、
エアコンの風量をひとつあげておいた。



 幸い氷がたくさんあったので、長嶋さんのほかにも、何名分か作ってみんなに配る。

その頃にはもう話は終わっていたから、
田中さんも自身のデスクへ戻っていた。


 よっぽど喉が渇いていたらしく、ありがとうと言われた次には、
一気にコップの中は空。


 もう一杯ついできましょうかと尋ねかけたが、

「市田、俺ちょっと挨拶してくるから。」
 遠目で誰かを見つけたのか、目線はふらふらとあっちへ行ったままで私に答える。


よっぽど大事な相手らしく、
珍しくネクタイを整え始める長嶋さん。

おまけに髪まで。
はたまた、「俺、くさくない?」だって。



 あの長嶋さんがそこまで気にしちゃうような、お偉いさんくる予定、今日あったっけ?

それらしい人を周りで探してみたが、見当たらない。ただもしそうなら、あの人かな~って方は営業の部署にいらっしゃった。

背がすらーっと伸びた、はじめてみる女の人。
後ろ姿しか分からないけど、綺麗な人なんだろうな。

そんな空気が醸し出されてる。


「あれでしたら、
先、今日のこと書類にまとめときましょうか?」

「あーいいよ。
お昼から一緒にしよう。市田も疲れたろ。」
 あのひと強面だったし。

すっごい怖かったですよ、ひげもじゃですし。
長嶋さんは声をあげて笑う。



「あ、代わりに、
品川さんの手伝いしてやってくれない?」

「手伝い?」
 
「いま会議室の片づけしてくれてるらしいから。」

「あ、そうなんですね。」
 道理で姿が見えないと思ったら。

「それ終わったら、早めにお昼とっていいよ。」
 私は二つ返事で、足早にそこへ向かった。

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