意地悪な両思い
「品川さん、手伝いますよ。」
声をかけた時、彼女は円形のテーブルを拭いていた。
なんでいるの?もう終わったの?早くない?
彼女の口から飛び出した「え?」って言葉には、そんな意味が込められてそうだった。
「早くに終わったんです。」
わたしは先回りして言った。
なぜだか得意げに。(長嶋さんのおかげなのにね。)
「もう誰かと思った!おかえり。」
「ただいまです。」
顔を見合わせて笑いあう。
だけど、まだ信じられないみたいだ。
「え、本当にこんな早く終わったの?
あのひと相手に?」
素直に頷く。
あのひとっていうのは、さっきも出てたひげもじゃの人のこと。
品川さんは私よりも先に、別件で会ったことがあるんだ。
だから、先週ちょっとだけ今日のことを相談してたりする。
「怖かったでしょ?
こんなひげもじゃで!」
品川さんはしかめっ面しながら、手で口周りに円を描いて見せる。
それが、あのこわーい先方さんだと気付いたのは、ワンクッション置いてから。
「なんですか、そのモノマネ。」
ぷっとふきだし笑いして、私も同じように手で円を描く。
「長嶋さんのおかげです。」
「よかったね。」
きゃっきゃ笑う私たちの隣で、なぜか独りでに布巾が床に落ちた。
本当、生きてるみたい。
幽霊みたいに、若干中央も立ち上がってる。
生きてるとしたら、言われる言葉はこれだね。
「口ばっか動かすな、まだ待たせる気か。」
「さて!私、なにしましょうか?」
ぱちんと手をたたいた。
品川さんも布巾を拾い上げる。
ごみ袋とかいっぱいじゃないのかな。
彼女の足元にあるゴミ箱をのぞいたが、三分の一も溜まってなかった。
「ふふっ。
そうなの、そんなに汚れてなくって。
けど、次営業部が使うらしいから。」
「へ―…。」
頭の中で速水さんがちらつく。
「あ、そうだ。
市田さん、資料室から椅子3つ持ってきてくれる?
あとプロジェクターも。」
私は快く頷いた。
資料室へ足早に歩いて、奥の方に無造作に投げてあった椅子をとりあえず二つ引っ張る。
会議室は比較的狭いから、誰かがここへ不必要な分を投げたみたい。もう一つあるはずの椅子はちょっと離れたとこにあった。
一度に持っていきたいとこだけど、コロコロがついているせいでそれも叶わない。若干ウルサク音を立てながら、私は往復することに決めた。