意地悪な両思い
「市田は何かないのか?」
「え?」
「俺に話しておきたいこと。
最近俺ばっか報告してる気がして。」
「うーん、私はいまそんな仕事に対して変化はないからなあ。」
「あ、いや仕事だけじゃなくてもいんだけど。
まるまる含めて。」
「まるまる?」
「うん、まるまる?
ほら忙しくなるから、時間とることもできなくなるかもしれないし。
今なら聞けるから。」
珍しく速水さんの調子が乱れているように思えた。
「いや、ないならいいけど。」
そうすぐに付け足した感じも少しふて腐れているように思えるし。
「どうしたの?」
だから、思わずそう聞いてしまった。
なんだか私の話を聞いてもらうより、速水さんのことを聞いた方がいい様な気がして。
「いや、俺が聞いてるんだけど?」
「あ、そっかごめん。」
ふたりして笑ってしまう。
「ありがとう。今は私は大丈夫だから。
また話したいことがあったらすぐ言うね。」
もう少しいろいろ自分で頑張ってみたいんだ。
木野さんのことも、まだ何もあれから進展できていないし。
「……分かった。」
まだ納得していない感はあったけど
「じゃぁ、また時間できたら電話する。」
速水さんのその言葉を最後に私たちは電話を終えた。
