意地悪な両思い

「市田?」

「はい。」
 すると丁度良く他の棚を見ていた速水さんが傍に寄ってくる。

速水さんも一通り見終わったのかな。
やっぱりめぼしいものはなかったらしく、何も手に持ってないけど。


「もうそろそろ店出る?」

「そうですね。」
 私も全体的にここのお店の商品見終わったし……

「次、どこ入りますか?」
 あとどこ見てないっけ。あそこは行ったし、あそこも―――。


「あ、違うくて。」


「ん?」

「気づかなかったけどもう18時らしんだよ。」

「え?」
 あそこと顎をしゃくった速水さんと同じところに視線を向けると、お店の物と察しがつく時計の短針が確かに6を指している。


いつの間にそんな時間経ってたんだろう。
映画を見終わってから時間が経つのがとっても早い。

「遅くなるといけないから。」
 帰りも混むだろうし。

「あ、そですね。」
 店出るってこのデパート自体をってことだったんだ。
あはは勘違いしちゃった、ちょっと…恥ずかしい。

私たちはそのまま駐車場へと戻り始める。


「ごめんな、大したことできなかったな。」

「ややや!すっごく楽しかったですよ!とっても!」
 映画自体もだけど、いろんなとこ二人で回れてまた速水さんのことを知れた気がした。

逆に、私がどんな人かってことも知ってもらえたと思うし、、
まぁでも、

「正直なこと言うと…ちょっと私緊張してたんですけどね。」
 昨日も興奮しちゃってなかなか寝れなかったぐらい。

「速水さんは…」


 そんなことなかったろうけど、さ。
そこだけは伝えず私はまるっと飲み込む―――けど、

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