意地悪な両思い
「大丈夫、丸わかりだったから。」
くすっと笑って速水さんはポンと私の頭を撫でた。
「…またからかってます?」
「よくわかったね。」
「もう!」
そう言って振り上げた手は、うまくごめんごめんと彼に交わされる。
「まぁ俺も緊張してたけどね。」
「え?」
「何でもない。」
「ちょ、速水さん!」
聞き返そうとしたが、丁度よく車へとついてしまいすぐに速水さんは乗り込んでしまった。聞きなおすタイミング失った私も、おとなしく助手席へと座る。
「市田疲れてない?」
「私は大丈夫ですけど、速水さんは?」
「そんなやわじゃないよ。」
でもありがと、と彼はつづけた。
「じゃぁ車出すね。」
「あっ……。」
「ん、どうかした?」
「や、なんでも。
……混んでないといいですね。」
微笑みを落として私はシートベルトを締める。
やっぱり帰っちゃうんだよね。
いざデートが終わるとなると、なんか急に寂しくなってきちゃった。
カチャンとベルトがハマる音が車内に響く。
「速水さん?
エンジンかけないんです…」
「市田、お腹減ってる?」
「え?」
お腹?
「肉、すし、パスタ。」
ぱっと彼は中の指3本を立てらかす。
「まだ俺も一緒にいたいんだけど。」