取り戻したい・・愛

✫✫大賀


俺は、20代の後半に
親父のいいつけで
同業の娘をめとった
それが、美津だ。

美津には、愛情もなかったが
美津は、そんな俺なのに
一生懸命尽くしてくれた。
それは、充分にわかっていたのに

ある日、見回りの帰りに通った
花屋で花を手入れしている
女に目を奪われた。

それからは、毎日花屋に通い
女に迫った。
その女は、柚木 史華だ。

だが、何度気持ちを伝えても
史華からは、よい返事をもらうことは
なく。
短気な俺は、しびれをきらし
「お前が俺の女にならないなら
この花屋を営業できないように
するぞ。」
と、脅した。

史華は、俺を睨みながら
「汚いですね。
ですが、わかりました。
絶対にこの店に手を出さないと
誓ってください。」
「ああ、嘘は言わない。」
こんな手を使いたくはなかった
だが、どうしても史華を
俺の手に欲しかった。

史華とは、最初はぎこちなかったが
少しずつ史華も心を開いてくれた。

今では、俺に笑顔も向けてくれる。
俺は、そんな些細なことにも
喜びを感じていた。

だから、美津がどんな気持ちで
いたかなんて、気づかなかった。

俺と美津の間には子供は、
授からなかったが
史華との間には女の子ができた。
海愛は、とても可愛赤ん坊だった。

俺は、海愛を溺愛していた。
そんな海愛が一才の誕生日に
お祝いをしていたら
美津が乗り込んできて
俺の飲んでいた酒の瓶を
海愛に投げつけた。

投げた瓶は、
海愛の背中にあたり
海愛は、救急車で運ばれ
一命をとりとめたが
海愛の背中にはかなり大きな
傷が出来た。

俺は、美津をその場で殴り倒した。
だが、それ以上することを
史華から止められ
こうなった責任は全て貴方にあると
責め立てられた。

そうだ、こうなるかもしれないと
どこかでわかっていたはずだ。

それなのに放置していたのは俺だ。

俺は、美津にも詫びて
美津が思うようにしたらいいと
言った。

離婚でもいいし
このまま夫婦のままでもいいと。

美津は、
「このまま貴方のそばに
置いてください。
実家にもかえれません
二度とこのような事は
しませんから。」
と、言った。
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