エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 倉木さんはなにも言わない。けれど、熱を帯びた瞳に思わず息を呑む。慈しむように頬を撫でられ、おもむろに瞼を閉じると、倉木さんの顔が近づいてきてキスが再開された。

 ゆるゆると唇の力を抜くと、求めるように深く口づけられる。逃げ惑う暇もなくて、あっさりと舌を絡めとられた。心音が煩くて、恥ずかしさもあり、勝手に目の奥が熱くなってくる。

「んっ」

 吐息と共に甘い声が漏れる。自然と倉木さんの背中に腕を回すと、応えるように空いた方の手で優しく私に触れてくれた。正しいキスのやり方なんて分からない。けれど、じわじわと押し寄せる快楽に身を委ねたくなる。

 そして、ゆっくりと唇が離れたときには、息が上がって、舌も唇も麻痺したみたいで感覚が不透明だった。肩で息をする私に対し、倉木さんは多少息を乱しながらも、艶っぽい表情をしていて、見惚れてしまう。

 このあとの展開がまったく予想できないまま、その顔を見ていると、倉木さんはいきなり私の肩口に顔を埋めて肌に舌を這わせた。

「やっ」

 突然の感触に驚きの声をあげると、今度は湿った肌にわざと音を立て口づけられる。そこを中心に鳥肌が立ち、体が震えた。

「ここ弱い?」

 顔を上げて尋ねてくる倉木さんの顔には、意地悪な笑みが浮かんでいる。私はもう色々な意味で涙が零れそうだった。

「キスより先のことはしない、って」

 本気ではないにしろ、責めるように言うと、倉木さんは口角をにやりと上げた。
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