エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「どんな味だったか、また教えてくださいね」

「心配しなくても一口あげるよ」

「え」

 これまた私の予想を裏切る切り返しに変に動揺してしまう。しかし、倉木さんはまったく気にしていない様子で、相変わらず視線はメニューの上を走らせていた。

「そのかわり、桜田さんは、このグリーンラーメンに挑戦してみて」

「なに勝手に決めてるんですか。絶対、春菊も入ってそうですし、食べるならトマトクリームの方がいいです」

「えー、なんか普通じゃん」

「普通でいいです!」

 つまらなさそうに言う倉木さんにきっぱりと答えると、倉木さんは笑ってくれた。けれど私は笑えない。倉木さんの発言に、心乱されっぱなしだった。

 次来たら、っていうのはてっきり倉木さんが個人的に来たときのことを話しているのかと思ったのに。まさか、そこに私も含まれていたことが、嬉しいような、喜ぶことではないような。

 倉木さんといると、上手く言葉では言い表せない感情がたくさん渦巻いて、ひどく私を困惑させる。

 倉木さんと付き合ってみれば、少しは男性のことが、男性との過ごし方が分かる気がした。でも実際は、分からなくなることの方が多くて、ずっと複雑で。

 そしてこの付き合いは仮初めのものなんだと意識すると、なんだか胸が締めつけられるように痛む。しっかりしなくては。

 これはお互いに割り切っているから成り立っている関係だ。私の目指すところは、お見合いをして、ちゃんと相手の人に気に入ってもらえて結婚をすることなんだから。倉木さんだってそれを望んでいるのだ。
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