エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「なんでこんなことしたの?」

「だって、倉木さんも私のために色々してくださいましたし、それに」

「そんな気を遣わせたかったわけじゃない」

 不機嫌そうに返されて私は口をつぐんだ。一度、唇を噛みしめて視線を落とす。

「気を遣ったわけじゃありません」

 相手に言われたわけでもないのに勝手なことをしてしまった。押しつけなのかもしれない。けれど

「ただ、倉木さんに喜んで欲しくて。笑ってくれたらいいなって。それだけです。ごめんなさい、勝手なことして」

 この気持ちは諦めないといけなくて、報われることもない。でも倉木さんのことが好きだから、笑って欲しい。喜んでくれたらいいな。

 それぐらいなら望んでもかまわないだろうか。ただ、それだけだった。けれど、それは完全な自己満足だ。

「あの、もしいらなかったら」

「美緒」

 名前を呼ばれて言葉を遮られる。倉木さんはいつの間にか強い眼差しで、こちらを見ていた。そして、サイドテーブルにチケットの入った封筒を置くと、立ち竦んだままでいる私の手を取った。

 やはり伝わってくる体温は高い。そして優しく手を引かれる。なんとなくその意味を悟り、私の顔は赤くなった。

「え、あの」

「こっちに来て」

 珍しく有無を言わせないような口調だった。それがなにを意味するのか、私にも理解できる。どうしようか悩んでいると、痺れを切らした倉木さんが今度は強引に手を引いた。

 観念して私は靴を脱いで、おずおずと膝をベッドにつける。倉木さんとの距離を縮めたところで、そのまま腕を引かれて抱きしめられた。
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