おはようからおやすみまで蕩けさせて
ドキン!と心臓が跳ね上がる。
ガン見する訳にもいかず、さっと視線を逸らせた。


「俺としてはあのまま好きにしても良かったんだけど、意識もない女を抱くのって虚しいから止めたよ」


しかも横にした途端大の字になって寝だすし…って、可笑しそうに状況を話すものだから、こっちはドキドキを通り越して恥ずかしくなってくる。



「す、すみません……つい飲み過ぎて……」


きっとここまでおぶってきてくれたんだろう。
もしも次に同じことがあった時の為に、今度こそは絶対にダイエットに成功しておこう。



「…それじゃあ、私はこれで……」


こんな場所に天宮さんと二人とかあり得ない。
心臓のドキドキが戻ってくる前にこの部屋から出て行かないとーー。



「待った!」


ぎゅっと手首を握られる。
ドキッとしながら振り返ると、乱れた髪の毛を手グシで整える彼と目が合った。


「昨夜自分が言った言葉を覚えてるか?」


「えっ。…私、何か言いましたか?」


薄っすらと記憶に残る言葉の数々を思い浮かべながら惚ける。


「俺のような優しい男の奥さんになりたいって言ったよな」


ひぇぇぇ。そんな滅相もない言葉を抜け抜けと言うなんて。


「あの、それは、その…」


酔った勢いで言った言葉ですから本気になさらず。
どうかその場限りだと思って忘れて下さい…と願おうかとしたけどーー。



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