おはようからおやすみまで蕩けさせて
「ダメ……浬…さん……」


今日は人事課長として初出勤する日でしょう。
出社すれば辞令交付式もあると言ってたじゃない。


「緊張解したいから協力してくれ」


顎を掴まれて振り向かされると、あっという間に唇を覆われる。絡み付いてくる舌の先に口腔内の自由が奪われる。


「…ん…んんっ……」


こんなことしてる場合じゃないと思うのに抗えない。
彼の舌先も指先も全部が私の快感を知ってる。


「…っはぁ……」


唇を離されてようやく息を吐き出した。
後頭部を右手で支えるようにしてる彼の唇は、顎から首へと向かってる。


「浬さん……ダメだってば…」


凡そ拒否にもならない言葉を囁き、彼の腕を握る。
呼吸を乱し始めた彼が唇を離し、突き出すようにしながら顔を上げた。


「そんな顔してもダメ。今日から忙しくなるんでしょう?万全の体制で出勤しないと、プライベートの疲れを外で出されたら困るから…」


念願の専業主婦になって一週間が経った。
年度始めの四月三日、夫の雨宮浬は人事課長に就任する。

実際は二ヶ月くらい前から引き継ぎもあって忙しそうにしていた。
私もチームリーダーの仕事を山本さんに引き継ぎしてたから、お互いに忙しい毎日を過ごしてたんだ。


「俺は結実を一度くらい抱いても、オフィスで疲れた顔なんてしないよ」


だからシよう…と甘い声で求めてくるけど。


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