おはようからおやすみまで蕩けさせて
愛美は「ごめん」と呟き、「新婚の結実に言っちゃいけなかったね」と泣くのを堪えて謝った。


「そんなの気にしなくていいから!また落ち込んだら電話してきて。何でも聞くし、思いきり泣いてもいいから」


必死になって頼んだ。
自分にもしも同じことがあったらお願いしたい気分だった。


「うん。……ありがと…ごめん…」


また会おうねと約束して電話を切ると、側から不安が広がっていく。

もしも、私も同じように妊娠し難い体質で、子供の一人も産めない体だったらどうする?
あれだけ私を溺愛してくれる浬さんがいるのに、彼の子供も産めない体だとしたら、彼は私をずっと愛し続けてくれるだろうか。

子供なんて居なくてもいい、と言ってくれる?
それとも判った時点で、手の平を返したように冷たくされるの?



(ヤダ……怖い……)


ぶるっと寒気が走って体をぎゅっと抱き締めた。
彼に甘やかされて愛し続けてこられた自分が、捨てられるかもしれないなんて考えたくない。

できるだけそこへ思考が及ばないようにしようと、せっせと家の中を掃除する。


朝拭いた場所をもう一度。
トイレは特に念入りに。


(だって、トイレを掃除したらいいことあるし…)


広がる不安を掻き消すように床を拭き、便器の外も中もピカピカに磨き上げた。



「ふぅ…」


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