おはようからおやすみまで蕩けさせて
異動が決まってからの毎日、天宮さんはこうして朝食を用意してくれている。

それは自分が家事を頑張ると言ったからだけじゃなくて、私の体が重ダル過ぎて起きれないからという所為もある。



「美味しい?」


フォークを片手に問われ、モグモグと口を動かしながら頷いた。


「良かった」


ホッとしなくても大丈夫。
貴方が作る朝食は毎朝信じられない程美味しいから。



(ホントに私が作るよりも美味しい…)


昨日のカボチャスープも最高だった。
冷凍のカボチャを使った時短料理だと言ってたけど、バターのコクと玉ネギの甘味とが上手く効かせてあって、時短とは思えないほどの深みのある味付けになっていた。


(おまけにこのサラダなんて見てよ。朝は忙しいのに大根とか三つ葉とかって刻む?)


おまけにドレッシングはどう見ても手作りっぽい。
マヨネーズにポン酢風味が漂う和洋風ドレッシング。


(負けるわ〜ホントに…)


どうしてこんなに何でもデキる人なんだろう。
天は二物を与えず…って言葉があるけど、これほどまでに似合わない人もいない。



「結実、ドレッシングが付いてる」


ボーとしながら食べてた所為だろうか。
斜向かいで食事をする彼がニコニコしながら自分の右頬を指差してる。


「えっ、ホント?」


どこに…と思いつつ同じ様にするつもりでフォークを置けば、彼の指先は私よりも早く頬を擦る。


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