おはようからおやすみまで蕩けさせて
「はぁ…」


熱めのお湯に浸かりながら大きく息を吐いた。

こんな生活がしたくて一緒になった訳じゃなかった筈なのに、思い描く理想とは反対に進んでいってる。


何をやらせてもデキる彼と、デキない私との差は広まるばかり。

この先、天宮さんとはどれだけ差が広がってくんだろう。

ずっとこんな生活のままなんだろうか。

私はデキないリーダー職を務めて、彼は主夫をし続けていくの……?



「あーあ…」


やっぱりもっとじっくりと時間をかけて決めたら良かったんじゃない?
幾ら大好きな人とでも、スピード結婚過ぎたんだよ、きっと。



(私はもっと、恋人の期間を持ちたかったな…)


今更だから口にもできない。

天宮さんは私が妻でも楽しそうにしてるし、今の生活にも満足してそうだ。

それなのに自分が続けたくないんてどうして言える。

言えば彼を傷つけそうだし、下手をすれば別れることにもなり兼ねない。



ボチャン!と顔を水面下に沈めた。
お湯の中で目を開けば、疲れた眼球にお湯が染みて痛い。

その中でパチパチと瞼を開閉すると、口の中の空気が漏れだし、ユラユラと水面に向かって気泡が飛びだす。


その上がっていく気泡を視界に入れて落ち込んだ。


幸せになれたと勘違いした人魚姫の気持ちが、何となく分かるような気がしたーーー。


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