おはようからおやすみまで蕩けさせて
「じゃあ上がったら夕食にしよう。今日はホワイトシチューにしたんだ」


美味いぞーと言いながら自分もバスルームに付いて来る。



「天宮さん…」


結婚しても、まだ名字呼びを続けてる私。
彼はそれが気に入らなくて、「浬」と自分の名前を口にするけど。


「ごめんなさい。一人で入らせて」


その方が疲れが取れそうな気がする。
貴方に髪を洗って貰うのは新鮮で心地いいけど、今日は何だか触れてほしくない…。


「俺と一緒だと嫌なのか?」


そうじゃない。
そうじゃないけど心が重い。


「ごめんなさい……ゆっくりお湯に浸かりたいの……」


二人だとどうしても狭いから。
手足を伸ばしてゆっくりとお湯の温度を確かめたい。


「ごめんね…」


首を傾げて上目遣いをする。
このお願いポーズに彼が弱いことは知ってる。


残念そうにきゅっと唇を窄める彼が切なそうな表情を見せた。
いつもの私なら彼のその表情には負けるけどーーー


「じゃあ入ってくるね」


ベージュのスプリングコートを脱いで預ける。
天宮さんはお風呂で私にサービスをして、昼間あったことを聞き出したい気持ちもあったんじゃないかと思うけど。


(今はもう、何も話したくない気分)


私は彼のどんな言葉を信じればいいの。
デキもしないリーダーをやらされて、仕事に対する情熱も冷めていきそうなのに。


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