おはようからおやすみまで蕩けさせて
貴方に心配をかけさせたくないからドアを開けてみただけ。
子供みたいな態度で困らせたくないから顔を覗かせただけ。


「そんなこと言わないでくれよ。俺達夫婦だろ。俺を誰だと思ってるんだ」


それは勿論、大事な旦那様です。
十分分かってるけど、だからこそ返って疲れてくるんだって。


「……お願いだから一人にさせてくれない?何も話したくないくらい、疲れきってるの……」


少しは私の気持ちも察してよ。
でないと私は、この家からも逃げだしたくなるーーー。



「結実…」


悲しそうな目をさせてしまった。
だけど、反省する気持ちよりも面倒くさい気持ちの方が勝ってしまった。


「ごめんね、本当にクタクタなの。今は天宮さんとも話したくないくらい」


はっきり目を見て言ったからだろうか。
彼が諦めたように息を吐いた。



「……分かった。結実の言う通りにするよ」


ホッとした途端、ドアを引っ張り開けられた。
ビクッとする私の横を擦り抜けて、彼がクローゼットへと向かいだす。


「あ…天宮さん……?」


何してるの?スーツやネクタイを取り出して……


「今夜は山本の部屋に泊まる。結実は一人でこの部屋で寝ていいから」


「えっ…」


「一人になりたいんだろう?俺とも話したくないくらい疲れてるんだろう」


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