おはようからおやすみまで蕩けさせて
「一体何だって言うんだよ!」


管を巻きながらビールを飲む俺を同期の山本雅也が呆れて見てる。
面倒くさそうな視線を送り、何でここに来たんだよ…といった顔つきだ。


「なぁ…来るなら来るで一言くらい言ってからにしてくれないか」


イケメンらしくもねーなと言われ、「煩い!」と悪態をついた。


「おー、怖っ」


くわばらくわばら…と肩を竦ませ、手に持っていたタバコを吸う。


俺が此処へ来た時、山本はオフィスの女子とイチャつこうとしていたところだった。
「泊めてくれ」と頼んだら、見たことのある女子は逃げる様に部屋から出て行った。


「お前、相変わらず女グセが悪いな」


出て行った女子の背中を見ながら呟くと、山本は「ケッ」と短い声を出し、「文句言うなら帰れよ」と脅した。


「いや、頼む。泊めてくれ」


ビールの入ったコンビニの袋を差し出して見せれば「まぁいいだろう」と了承されて入った。

それで二人で飲みだしたのはいいんだが、飲んでも飲んでも全く酔いがやって来ない。
頭の中では話したくないくらいに疲れてる…と言った結実の顔が浮かんできて、どうにも酔いが遠退いていく。


「……それで?」


タバコの先を揉み消した山本が、ようやく話を聞き出そうとしてくれた。


「どうして俺んとこに来たんだよ。お前には愛妻のいる部屋があるだろ」


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