おはようからおやすみまで蕩けさせて
プルタブを押し込み、プシュッと炭酸ガスが噴き出す。
クイッと一口煽った奴が「言ってみろよ」と呟く。

その言葉を聞きながらヤケクソで買ったビール缶の三本目を開けて飲み込んだ。



「ぷはぁ〜っ!」


息と一緒に重くなりそうな気持ちまで吐き出し、タンッ!と底を叩くように置いた。


「喧嘩したんなら帰ってくれよ。犬も食わねぇ様な事なら聞きたくもねーからさ」


同期だからって甘えんな…と言われ、「喧嘩なら此処には来ない」と言い返した。


「だったら余計に帰れよ。此処は駆け込み寺じゃねーぞ」


ややこしい事には巻き込まれたくないもんだからそんな言い方をする。
こっちが独身の時には、女と揉める度に人の部屋に逃げ込んできたくせに。


「俺が帰ったら結実が出て行きそうだから帰れないんだよ」


「おっ、早くも三行半突き付けられたのか?」


古めかしい言葉を使って喜ぶ。
他人の不幸が山本には幸福らしい。

でも…


「なんかそれに近い雰囲気があったよな」


結実の言動を思い出して溜め息を吐いた。
俺とも話したくない程、疲れるような仕事がオフィスであったんだろうか。


「なぁ…今日忙しかったか?」


ビールを飲もうとしてる山本に尋ねた。


「いや。俺はそんなに忙しくなかったが」


「アホ。誰がお前のこと聞いてるか。結実だよ」


< 62 / 164 >

この作品をシェア

pagetop