おはようからおやすみまで蕩けさせて
独り占めできた嬉しさも重なって、一時も離したくない程ベタついてた。


「おい」


ぼんやり考え込んでたら肘で突かれた。
目線を戻したら奴の口角が上がる。


「もしかしてお前、ヤり過ぎてあいつに重いとか思われてんじゃねーの?妄愛し過ぎて疎ましがられてたりして」


ケケケ…と笑いながらビールを飲み込む。
やっかみ半分で言ってるんだと思うが、何となく聞き逃してもおけず……。


「重い?」


つい聞き返してしまった。
結実にそんなふうに思われてるとしたらショックだ。


「お前って思い込んだら一途だろ。大学の時も嫉妬深過ぎて女に捨てられてた口じゃん」


同じ大学卒の山本が古い話を持ち出す。
こっちはそのトラウマも重なって、なかなか思いも告げられずに何年も結実に片想いを続けてたんだ。


「その点では注意してるつもりだったが」


自分としてはそのつもりでいたけど、果たして本当にそう出来てたかどうかは自信がない。


「お前にはつもりがなくても相手には積もってるかもしれないぞ。大学時代の女みたいに『うざいから別れて』とか言われないようにしろよ」


あの時みたいに泣き言なんか聞いてやらないぞ、と言い捨てる。
言われるもんかと意地を張ったが、何だが自信が無くなってきた。


チビチビとビールを飲みながら、この最近の結実を思い出す。


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