おはようからおやすみまで蕩けさせて
「あ?あいつ?」


「あいつなんて言い方は止せ。俺の嫁さんだぞ」


「はいはい、悪妻ね」


「愛妻だ。殴るぞ、雅也」


怒ったように脅せば、「冗談だよ」と笑いながらビールを飲み込む。
ゴクンと飲んだ後は「うーん。どうだったかな〜」と上を向いた。


「お前、リーダーがどんな仕事をしてるか見てないのかよ」


「そんなもんに興味ねーからな、俺は」


「それじゃ結実のことを頼んだ意味ないじゃないか。適当な仕事するならまた店舗運営部に戻すぞ」


向こうで女と揉めたから困ってるんだと言ってきたのは誰だ。
俺が人事部長の榊原さんと仲がいいことを知って、頼むから異動させてくれと言ってきたくせに。


「それはマズいから勘弁してくれよ。リーダーだろ?うん、まぁちょっと疲れてそうだったな。チームの女子が…津田って言ったっけ、そいつが心配そうに面倒見てた」


背の低い女子を思い出した。
いつも結実と一緒に商談のテーブルに付いてる子だ。


「商談の途中で具合悪くなって席を外れたそうだぞ。デスクに戻ってからも何だか草臥れてるように見えたな」


お前、毎晩ヤり過ぎなんじゃないか?と揶揄う。
「まさか…」とやり過ごしたけれど、満更違うとも言い切れない。


結婚してからこっち、結実のことが可愛過ぎて堪らなくて、毎晩のように求めてしまった感がある。

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